一流になれないプログラマの生存戦略

(2013-12-28 タイトルをエンジニア→プログラマに変えました)
cybozu.com の中の人、山本泰宇です。2013年も今日で仕事納めです。

さて、先ほどプレスリリースが出たのですが、来年から私は運用本部長として、自社クラウドサービスおよび社内情報システムの運用を統括する仕事をすることにしました。この2年ほどはプログラマとしての仕事を多くしていたのですが、今後は自らプログラミングする機会は大幅に減ることになると思います。

ご存知の方もいるかもしれませんが、実は私が本部長になるのは2度目です。2005年に開発部長になり、そのまま規模を拡大して2006年に開発本部長となり、2007年に退きました。本部は違いますが、7年ぶりの再登板ということになります。略歴としては以下のようになります。

  • 2001年12月 サイボウズに入社    プログラマとしてガルーンを開発
  • 2005年   開発部長
  • 2006年   開発本部長       
  • 2007年   社内ニートに降格    以後3年ほど CTO や東大の非常勤講師などをして過ごす
  • 2010年   cybozu.comの開発を開始 アーキテクト兼プロジェクトマネージャーを務める
  • 2011年11月 cybozu.com販売開始   ローンチ後はひらのプログラマになる
  • 2014年   運用本部長

社会人として12年勤めましたが、そのうちプログラマとして活動していたのは最初の3年と、直近2年です。あとの7年はプログラマではなく部長・本部長や CTO や東大の非常勤講師などをしてました。実は C++ 始めたのもこの2年のことで、この前公開した C++ プログラミングの入門資料も、私が学んだ際のメモのようなものです。yrmcdsC++11 の手習いがてら作ったものですし。

だからというわけではないですが、私は自分のことを一流のプログラマだと考えたことはありません。振り返ると大学時代から、当時の私には魔法のようにプログラムができる人(ウィザードとかグルとか言いますよね)が周囲にたくさんいたもので、大学院に入るまでついぞまともにプログラミングができなかった自分は一流になれないと悟らざるを得ませんでした。

でも、コンピューターのことが好きでした。コンピューターの仕事をするのは、親に PC を捨てられても諦められない、子供のころからの夢でした。そこで最初に選んだ戦略が、ほかの人と一緒に働くことです。スーパーエンジニアであれば一人でも立派にものを作れるのでしょうけれど、凡庸な私にそれは無理なので、いろいろな人と協力して働くことに決めました。

そうして働いてみると、気付くことがありました。様々なドキュメントを書いたり、積極的にプレゼンテーションをしたり、MySQL AB と直接 OEM 契約を結んだり、幅広い技術情報を知っているといった点で、私は実は「あまりいない」タイプの人材でした。あまりいない、けど役に立つというポジションは生存戦略としては理に適ったものです。

例えば、私は Web アプリケーションを開発する会社に12年勤めていますが、いまだに JavaScript が書けません。サイボウズには JavaScript が得意なエンジニアはたくさんいるので、ほかの人と一緒に働くのが前提の私としては、学ぶ必要性がなかったのです。代わりに、cybozu.com の開発では Cisco をマニュアルで独習してネットワーク設計するといった仕事をしました。それができる人材が少なかったからです。

今、サイボウズではインフラ系の人材も駒がそろってきた状況です。もはや私が C++ を書かなくても、ネットワーク設計をしなくても、あるいはアーキテクトとして指揮をしなくても、おそらく売上は順調に増加し、優秀な人員も増加するという局面である気がしています。一方で近い未来に必要になるのは、国際的なビジネス展開だと認識しています。

本音で言えば、この2年でプログラマとしてもやっていけそうな感覚に至ってはいます。昔手が届かないと思ったウィザード達が、雲の上というほど遠い存在ではないとも思えます。でも、それは逆に言えば、伸びしろの限界が見えてきたということかと。手が届かないところに憧れている状態というのは、伸びしろがまだまだあるともいえるのですから。

長くなりましたが、そんなわけで、また異なるスキルを伸ばして自分自身と会社の成長に資することに挑戦しようと思います。来年40歳になる私ですが、チャレンジする心は持ち続けて頑張ろうと思います。具体的には、国際的なビジネス展開を支える、運用組織を築いていくつもりです。今後とも、よろしくお願いいたします。

大きな仕事の節目なので、これまでの仕事の経験をまとめた資料を作ってみました。ご覧いただければ幸いです。